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…そこは、血の海だった 一歩足を踏み入れると、ぴちゃり、どうしても血溜まりを踏んでしまう …これは、この靴はさっさと捨てた方が良さそうである いくら洗っても、このしみこんだ血の色は消えてはくれまい 「将門様ったらぁ。ご機嫌が良さそうねぇ」 くすりと、スーツに身を包んだキャリアウーマンが呟く 彼女はハイヒールを履いており、血溜まりに足を下ろしていても、特に問題はなさそうだ 彼女が契約している都市伝説は、目の前で起きている惨劇が恐ろしいのか、彼女の背後に隠れてぷるぷると震えている 「だなぁ。やっぱ、暴れてぇのかな?」 「たまには自分で戦わないと、勘が鈍ってしまうのよ」 くすり、微笑んだのは、キャリアウーマンとは別の、20代前半と思われる女性 びちゃり!飛んでくる血飛沫を浴びないよう、青年たちよりも少し離れた位置にいる 「うー…」 「ん?どうした?怖いか?」 「うー…ちょっと」 …にじにじ 少年は、青年の背後に隠れた ……それは、そうだろう この光景は、まだ10代に達していない少年には、刺激が強すぎる 彼らの主が、その辺りを配慮してくれるかどうか… …微妙である 大変と、その辺りは微妙である 何せ、時代の感覚が、イマイチズレている事もあるのだから はたして、配慮してくれているかどうか、微妙すぎる 青年の背後に隠れた少年 腕には、怪我でもしていたのか、痛々しく包帯が巻かれている …そもそもが、これがこの、惨劇の原因なのだが 「……くかかかかかかかかかかかかかか!!!」 主の笑い声が響き渡る ひゅん!と刀が振るわれ、武士の首が飛んだ 「…どうした、どうした!?貴様らの力はその程度かぁ!?弱い、弱いぞぉ!!その程度の力で、貴様らは主の仇討ちに挑んだとでも言うのかぁ!?」 向かってくる武士たちに、武者はそう声をかける 武士たちは、腹を裂かれたおどろおどろしい姿のまま、武者に襲い掛かっていく …しかし、武者には敵わない 武者は、迫ってくる武士たち相手に刀を、槍を振るい、一対多数の戦いで、互角以上の戦いを繰り広げていた …決して、武士たちが弱い訳ではない 武者が、強いのだ 武者と武士たちは、生きた時代が違う そして、互いに「呪い」と言う本質を持ってはいるが…その力量が、違いすぎるのだ 武者は、平将門 武士たちは…赤穂浪士 聞いたことあるだろうか? あの有名な、赤穂浪士たちの討ち入り 自分たちの正義を信じ、仇討ちを果たした者達は…しかしその後、切腹を命じられた 無念の思いを抱き、死んでいった武士たち その無念の想いが染み込んだ地…そこに、近代的な、セレブを象徴するような建築物が建てられた この地が、そんな呪われた地である事を、その建物を使用している者たちの、何人が知っているだろうか? その建築物で不幸が続き…その建築物は呪われている、という都市伝説が生まれた それは、赤穂浪士たちの無念と混ざり合い …新たに生まれた、呪いの都市伝説 それが、どうして、首塚と戦っているか、といえば 「………」 ちらり 青年は、自分の背後に隠れている少年を見つめた 腕を怪我した少年 その建築物を訪れた際、この少年は怪我をしてしまった 幸い、この少年が契約している都市伝説の力で、命は落とさなかったが…見ての通り、腕に怪我をしてしまった だが、都市伝説の力がなければ…きっと、この少年は命を落としていただろう 以前、その建物で命を落とした、幼子のように それに激怒したのが、将門だった 己の部下を傷つけられたのが気に食わない 子供に被害をもたらしたのが、気に食わない …将門とて、首塚を汚されれば、相手が子供であろうと容赦はしない ……しかし この少年は、ただ、あの建築物を訪れただけだった あの建物の建築に携わった訳でもなく、赤穂浪士たちを侮辱した訳でもない …それなのに、命を危うくするような目に合わされた 将門はそれに激怒して、刀を取った 「小童共に仕置きをしてくる」 と、そう言って 「…あ~、そろそろ終わるな」 残り、後一人 残った武士は一人だけだ しかし、その最後の一人も、決して、逃走などしようとせず、将門に刀を構え、攻撃の機会を窺っている 「……くくくくっ、引かぬか。我を前にして、恐怖もしないか」 くっくっく、と 将門は、さも面白そうに、笑っている …もしかしたら、当初の目的を見失っているんじゃないだろうか 若干、心配になってきた 「ならば、来るがいい!我に一矢報いて見せよ!!我は将門!首塚に祭られし祟り神、平将門であるぞ!!貴様ら程度の、ほんの数百年程度しか生きておらぬ小童でも!!!我に立ち向かうと言うならば、せめて一撃を加えてみせよ!!」 刀を手に、将門は挑発する その挑発に、乗るように……武士は、刀を構え、将門に突進した 将門は、それをよけようともしない ただ、ニヤリ、笑って ずぷりっ、と 武士の刀が、脇腹に刺さる… …はず、だったのだ 「………くかかかかかかかかかかかかかかかかか!!!」 笑い声が響きわたる 将門の胴体が、消えた ふわり、首が浮かび上がる 「……やばっ!?」 青年は、慌てて少年を抱えて背後に下がる きょとん、としている少年に、怒鳴るように声をかけた 「目ぇ閉じてろっ!!いいって言うまであけるなよ!?」 「…?う、うん」 ぎゅう、と目を閉じる少年 キャリアウーマンも、自身が契約している都市伝説と共に後ろに下がり…フィラルディア計画と契約しているあの女性など、さっさと自身の能力で安全圏まで避難していた ふわり 浮かび上がった、将門の顔 はらはらと、髪が落ち武者のように乱れだし、その顔に狂気が宿る 「褒めてやろうぞ。我に一矢報いんとした事を…だが、貴様らでは、我には敵わぬ。貴様らでは、まだ足りぬ。恨みも!怒りも!!憎しみも!!!我には到底及ばぬわぁっ!!!!!」 将門が目を見開くと、そこから血の涙が溢れ出した 口から漏れ出す声は怨霊の呻き声へと変わり、空間を揺らす 最後に残った武士一人 そんな将門に、じろり、睨まれて… ……ごきりっ 首が折れて……どさり、血溜まりの上に、倒れこんだ 「…将門様、やりすぎっすよ」 「む?そうであったか?」 ふわり 生首姿のまま浮かび、将門はくくくくっ、と笑う 不気味な姿ではあるが、これが本来の「首塚」将門の姿である 何せ、将門は首だけで、首塚のある場所まで飛んで来た、と言い伝えられているのだから 「我と同じ、呪いを司りし者共だ。全力で戦ってこそ、礼儀であろ?」 「…そーいうもんっすか」 「ふふっ、駄目ねぇ?男の子なんだから、そこら辺の心境はわかってあげなくちゃぁ」 くすくす、キャリアウーマンに笑われて、青年は臍を曲げる じゃらり、身につけているシルバーアクセサリーが音をたてた 「…む?ふぃらでるふぃあ計画の女子はどうした?」 「あー、将門様の呪いの力から逃れるために、こっから離脱したっすよ。先に戻ってるんじゃないすか?」 全力で戦うのが礼儀 それは、いいのだが …できれば、ギャラリーの事も少しは考えて欲しいものである 「ふむ、そうか。宴の準備でもはじめてくれていれば良いのだがな。勝ち戦の後は、宴に限る」 「あ、それじゃ、連絡しときますね~」 キャリアウーマンが携帯電話を取り出す フィラデルフィア計画の女に、酒やつまみを用意するよう、連絡するつもりなのだろう 青年は、あの女性には嫌われているから、自分が連絡するよりはいいだろう…と、青年はそう考える 「…む?どうした、そこの童は何故、目を閉じ続けている」 「将門様の今の姿、こいつには刺激強すぎっす。ショックで心臓止まりかねません」 ふわふわと、生首の姿のまま浮かぶ将門 これが、本来の姿であると…この少年も、わかっているだろうが しかし、刺激が強すぎる 都市伝説と関わっているくせに若干怖がりなこの少年、ショック死は言い過ぎとしても、多分気絶する 「む、そうか。では…」 っふ、と 将門に、胴体が戻った 落ち武者のようになっていた顔も、端整な武者の者へと戻る 「目ぇ、あけて大丈夫だぞ」 「ぁ……」 恐る恐る、少年が目をあける 将門はすたすたと少年に近づき…その頭を、やや乱暴に撫でた 「お前の怪我の借りは、返したぞ」 「………!」 ぱぁ、と 強張っていた少年の顔に、ようやく笑顔が浮かんだ 将門は、ようやく笑顔を取り戻した自分の配下の様子に満足すると 青年たちを従え、その場を後にした 後には、首を切り落とされた武士たちの死体が、ごろごろと転がっていたが… 都市伝説でしかなかったそれらは、やがて、消えた あれだけあった血溜まりすらも、まるで、何事もなかったかのように、消えうせ …後には、ただ元のままの、建築物の綺麗なロビーだけが、残ったのだった 終 前ページ次ページ連載 - 首塚
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三面鏡の少女 19 「第130回あたし会議ー」 「議題はあたし達とかほったらかしで宴会に行ったあたしの糾弾でーす」 「勝手に議題出さないで!?」 「たっぷり呑んだとかいいもん色々見たとか羨ましいぞー」 「あたし達にもアルコールの摂取とセクハラ対象の提供を要求するー」 「首塚のチャラいおにーさんのメイド姿見たいー」 「歌手のおねーさんのスカートめくりたーい」 「Dさんが酔っ払ってるところに絡みたーい」 「思い出させるなー!? 色々やらかして後悔しきりだってのにー! あとDさんには絡んでないっ、呑ませちゃったけど!」 三面鏡の鏡台をばんばん叩きながらのた打ち回る少女 「今回の議題はっ! 診療所のバイトおにーさんが行方不明だとか、学校の男子や先生が急にお休みが増えたとか、そこいらへん!」 「後者は新型インフルエンザでいーじゃん」 「実際それで休んでる人多いしねー」 「てかもう学級閉鎖通り越して学校閉鎖間近だしー」 「かく言うあたしのクラスもお休みでね」 「いやいや、なんか組織の方も結構バタバタしてるみたい。都市伝説絡みの事件な感じ!」 「でもお呼びが掛からないって事は数いるだけじゃ何もできない相手って事よね」 「下手に出ていくとまた怪我してHさんやドクターに迷惑掛けるよー?」 「むしろそれが狙い? Hさんやバイトさんに助けられたい?」 「そういう方向に話を持っていかなーい!?」 「でもあたし達としては彼氏とか欲しいでーす」 「隣の席の彼とか結構脈ありだと思いまーす」 「陸上部にいる彼、練習中でも通り掛るとこっち見てるよねー」 「いつも買い物にいくスーパーの若店長、なんか凄く優しいよねー」 「買い物帰りによく公園で遊んであげてる小学生の子、お姉ちゃんをお嫁さんにするって割とマジ顔で言ってるよねー」 「何これ、意外とモテモテ?」 「しかも年齢層が幅広いです、隊長!」 「終了! その話題は終了!」 「それでは宴会の件の糾弾を再開しまーす」 「それも無し!」 ぱたむと三面鏡を閉じて、溜息を吐きながらぺたんと座り込む少女 「あーもう、ホントにあたしの契約した都市伝説って使いでが無いなー」 今回の騒動に関しては何が起きてるのかすらまだ知らない 黒服Hも積極的な干渉はしないつもりらしく、その事からあまり関わらないようにとだけは伝えられていた 「うーん、契約コストが軽い別の都市伝説とも契約する事も視野に入れた方がいいかなー。鏡系でなんか良いの無いかなっと」 とりあえず図書館にでも行って勉強がてら都市伝説について調べようかと、ぱたぱたと身支度を整えて玄関に出る 「あら、お出掛けー?」 リビングの向こうにあるキッチンから、のんびりとした母親の声が聞こえてきた 「うん、図書館行ってくるー」 「ちゃんとマスクしていきなさいねー、インフルエンザとか拾ってこないようにねー」 「はーい」 玄関から一歩外へ出ると、秋の冷たい風が頬を撫でていく 「寒……コートとマフラー新調しようかな」 寒空の下、お気に入りではあったが着古したコートをまじまじと見詰めて考え込む 「図書館行く前にちょっと見に行こうっと……LOLIQLOとかデザイン好きなんだけど、子供服以外も出してくれないかなー」 前ページ次ページ連載 - 三面鏡の少女
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南区のその一角で、銃声が鳴り響く 三人の警察官が、襲い掛かってくるコーク・ロアに支配された被害者達に、その影響を取り除く特殊な薬品を内臓する特殊弾を放っていく …何らかの都市伝説の影響が働いているのだろう 一般人の姿がない為、わりと遠慮なく発砲し続けている 「あぁ、くそ、弾切れか!?……ッ広瀬警部補!」 「今、そちらに装填済みの銃を………っ!?」 中年の警察官に、特殊弾を装填済の銃を投げ渡そうとした広瀬 美緒 しかし…その彼女の体を、背後から現れた何者かが、押さえ込んだ 振り返れば、包帯塗れの顔の何者かがいて……その、ぽっかりと空洞になったような目の位置に、狂気がにじみ出ていて その体に、漆黒の蛇が巻きつき、ゲラゲラと笑っていた 「注射ぁ……して、あげようかぁあ……?」 『ヒャッハハハハハハハハ!!やッチマエ!!タップリト注射シテヤレヨォオオ!!』 「--ッ注射男……!」 その腕から逃れようとするが、都市伝説の強い腕力で押さえ込まれ、身動きできない 注射男の片腕に…どす紫色の液体の入った注射器が、現れて 中年警官が、急いで駆け寄ろうとしてくるが……距離がありすぎる 間に合わない 注射器は、そのまま、美緒の腕に、注射を打とうとして 「----っぎ!?」 『グァ!?』 すぱぁんっ、と その腕が……あっけなく、切り飛ばされた 鮮血を撒き散らし、注射男は痛みに悶え、美緒から手を離す 「無事ですか!?」 「…影守、さん…………はい、問題、ありません」 刀を手にし、鎧を纏った影守が美緒を背後に庇うように、注射男の前に立った 刀の切っ先は、痛みに悶える注射男に向けられている 「都市伝説や、悪魔の囁き憑きの相手は、俺達が引き受けます。あなた達は、コーク・ロア被害者の対処を!」 「……わかりました」 影守がきたことで………少し ほんの、少しだけ 美緒は、ほっとしたような表情を、浮かべたのだが その表情は、すぐにいつもの、どこか冷たい表情へと、戻った 「無事か?警部補殿」 「…問題ありません。都市伝説の相手は「組織」の方にお任せしましょう」 駆け寄ってきた中年警官に、弾を装填済の銃を手渡す美緒 あぁ、と中年警官は、頷いて 「……よかったな?ここに駆けつけたのが、あの兄ちゃんで」 「……………どう言う意味ですか?」 「いや、警部補殿としては、嬉しいんじゃないかと思ってな」 「この状況で、馬鹿な事を仰らないでください。訴えますよ?そして勝ちますよ?」 わかったわかった、と苦笑して、中年警官は再び、コーク・ロア被害者達に向かっていく 美緒も、そちらに応戦したいが……自分は三人のサポートで精一杯だ 駆けつけた影守のサポートも…彼女には、無理だから 「………どうか………………誰も、死なないでくださいよ……」 ぽつり、と 小さく呟かれた、美緒の言葉は 誰の耳にも届く事なく、喧騒の中吸い込まれて、消えた to be … ? 前ページ / 表紙へ戻る / 次ページ
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『私の世界』 前編 夢の内側から夢を観測している。 自分ではない誰かが自分のフリをして外界へと手を伸ばす。 私が消えてしまう、私が死んでしまう。そういった感覚が背骨の上を走る。 足首が痛い。瞼の裏側が熱い。お腹が、子宮が、疼いている。 私にしか聞こえない声で、あの腕は私に囁いた。 ――――お前は人間ではありえない。 第二話『私の世界』 背中側から発せられる軋みの音で薫は目を覚ました。 体全体を倦怠感が包む。薄いシーツを上にかけてるだけにも関わらず体が熱い。 どうやらベッドの上にいるらしい。 蛍光灯一本が薄暗く部屋を照らすこの部屋は自分の記憶にない。 「起きたか」 自分の視界の外から声を掛けられて、薫は体を起こしてそちらを向く。 窓から入る月明かりが、椅子に腰掛ける長髪の女を照らしている。 目は細く吊り上っていて、頬に二本の傷がある。鼻の形がいいおかげが普通以上の顔に見えるがお世辞にも美人とは言えない。 この女は……誰だ。私は……。 頭がぎしりと痛む。 「痛……」 「無理をするな。仮とはいえ契約した直前に戦闘を行ったんだ、あまり動かないほうがいいぜ」 ――――思い出した。 確か家の前の自販機でカタワさんに襲われて、この月に照らされている女に助けられて。 それから、私が、カタワさんを。 「殺した」 「ん? どうした」 私が殺した。カタワさんの頭を、砕いた。 どす黒い塊が喉の奥にツッかえている。あの時の自分は化け物だった。 と同時に自分の居場所があそこにあったと、そうも思う。 怪異を『力』として使役し、何かを壊す快楽。己の奥に快い暗闇が広がる、あの時間。 欲しいものがあった。自分を迎え入れてくれる環境。 小さい頃に失った、誰もが当然のように笑顔でいられる空間。 その輪を外側からしか眺めることが出来なかった。あの笑顔を自分がすることも、誰かに向けられることもない。 だが、今日私は笑顔をした。 ――――これから殺す、獲物に向けて? そして私は笑顔を貰った。 ――――姿も見えない獣の腕に? 「うぅっ……」 頭が痛い。脳髄が沸騰している。頭蓋の中心が、渦を巻いて私の外に飛び出ようとしている。 そういえば、ここはどこなのだろう。 薫は片手で側東部を押さえながら、女に質問をすることにする。 「ここは、どこなんですか?」 「ウチの割り当てられている部屋だ。あの後お前もぶっ倒れたから仲間に連絡して連れてこさせた」 「貴方は、誰なんですか」 そう質問した時、部屋の扉が勢いよく開く。 「いやー、新入りがいるんだって? 猿から聞いたで」 更にその扉の勢いにも負けないくらいの勢いとテンションの持ち主が入ってきた。 顔は十八、九の青年に見えるが服装はスーツだ。短く刈った髪は真紅に燃え、耳にはジャラジャラとピアスを付けている。 目鼻立ちがよく十分に美形と言えるだろう。だがその顔の半分以上に刺青が入れてある。 異様な人物であることは姿もさることながら、部屋に入ってから片時もお喋りを止めていない所からも見て取れる。 「ナナシさぁ、猿を自由にしとくの良くないで。ああ見えてパラドックス共はお喋りや」 「五月蝿いボケ。ウチ指図するなゴミカス」 「口悪っ! 相変わらず口悪っ! 新入りちゃんはこんなならんどいてな」 「ぶっ殺す。それと、こいつは新入りじゃない」 「え、そうなん? じゃあなんでここにいるん?」 「『巻き込んだ』責任がある」 「でも『適合体』ではあるんやろぉ? なら入っちゃった方が安全とちゃうのん?」 完全に薫を置いて話は進んでいく。自分の置かれている状況がますます良く分からなくなる。 判明したのは、女がナナシと呼ばれている事くらいだ。 この二人の話に割り込むべきか否か。 未だやむ気配のない罵り合いなのか情報開示なのか分からないやり取りを見つつ、長考する。 「ナナシちゃん知っとる? 怒るとおっぱいちっちゃくなるんやで?」 「よし、殺す。キーコに頼んで研究棟の多重擬似深淵牢獄に放り込んでやるよカス」 「あんな化け物だらけの空間嫌やぁ。なあ新入りちゃん」 うむむと顎に手を当てて考え事をしていた薫に予想外のボールが投げられる。 もちろん話など欠片も聞いていないので何も答えることが出来ない。 考えあぐねた結果、先の質問をこの男にも投げかけてみることにする。 あの、ここはどこなんですか?」 「ここ? 東京やで。アポトーシス東京支部」 「おいゴミクズ。そこまで教えるんじゃねェ」 「ええやん、いずれにせよそれを言わんと話も進まれへん」 東京……。随分と遠くに連れてこられたものだ。県を五、六個跨いでいるではないか。 それにアポトーシスという、恐らく支部とつくあたりなんらかの組織名と考えられるソレ。 とりあえず自分の大まかな居場所の把握という目的は達成した。次は一個ずつ謎を潰していこう。 「あの、アポトーシスってなんですか?」 「お、やっぱ気になる?」 「ボケカス、教えんな」 「えー、なんでなん? けちんぼさんやな君はホンマに」 「こいつはこのまま日常に戻ったほうがいいんだよ」 「アレを見たからか?」 いつの間にか例の獣の腕がぷかぷかと扉の前に浮いていた。 薫の心臓がゾクリと跳ねた。あの時の、カタワさんの頭を吹き飛ばした時の感覚が蘇る。 と、同時に右足首が痛むことに気がつく。じくじくと熱を持ってそれが主張する。 表情はなくともあの獣の腕の持ち主が楽しそうに笑っているのが分かる。 「初めはただの上級適合体かと思った。けど、『アレ』はあり得ねェ。あり得ちゃいけねェ範疇だ」 「おいおい、穏やかやないなぁ。何を見たん?」 「……」 黙ってしまったナナシに変わって獣の腕が答える。 「喰った」 「喰った? 何をや」 「矛盾、いや還元していたから『エーテル』というべきか」 「ふはは、冗談キツいで猿ちゃん。そんなん無理や」 チャラチャラした男が一気に苦笑いを浮かべる。それに対しナナシはいらついた様子で応答した。 「理論上は可能だろ。無理やり情報を埋めて取り込んじまえばいい」 「高機能干渉……」 「しかもその間意識が無い」 「天敵やんか」 「パラドックスに対してもウチらにとってもな」 男の方は額にじっとりと汗をかき、ナナシは腕を組んで黙ってしまった。 獣の腕も言葉を発さず。静寂が部屋を満たした。 薫は恐らく己に関する発言の数々を反芻するが一つも理解できない。完全に置いてけぼりを食らってしまった。 今更何を話していいかわからず周りと一緒に黙るほか無い。 今まで把握し切れていたと思っていた自分という存在。その自分が異様な集団に異様と称される不安感。 私という存在に対しての懐疑が大きく己の中で膨らむ。 ――――知りたい。知らなければならない。 拠り所を無くした自分だからこそ、さらに己を失う訳には行かない。 痛む右足。軋む頭。こうなった原因を。この静寂の理由を。私は知らなければ。 薫は自分の下半身を覆うシーツをぎゅうと握り締め口を開く。 「あの、教えてください。貴方たちのこと、あの化け物のこと、それに、私のことを」 全員がこちらに意識を向ける。男は苦笑いをし、女は飽きれ、腕は笑う。 この主張が受け入れて貰えるか分からない。そうなったときに私は食い下がるのか、それとも諦めるのか。 はぁ、とため息を付きナナシが口を開く。 「二つ約束しろ。一つ、今から聞くことを他言しない事。二つ、この話を聞いたら『選択』すること」 「はい、約束します」 「お嬢ちゃん。後悔しなさんなや」 「大丈夫です。私、知りたいんです。嫌なんです、自分を疑うのだけは」 薫は過去の自分に対する出来事によって、ある種の閉塞的な自己嫌悪を抱えている。 その嫌悪に相対していたのが過剰なまでの自己愛と他者への拒絶である。 その自己愛の部分が懐疑によって崩落すれば、残るのは事故嫌悪のみとなる。そうなればきっと、自分は消えてしまう。 ソレが怖い。歩んできた道が全て虚構によるものだと考えてしまうのが嫌だ。 だから少なくとももてる限りの情報は得ておきたい。それから全てを判断すればいい。 「おーけー。とりあえず開示できる範疇だけは全部教えてやる」 ナナシは自分の座っていた椅子から立ち上がると、部屋の隅に付属していた冷蔵庫から缶ジュースを三つ取り出す。 そしてソレを、自分、男、薫に配る。 長くなりそうだからな、そういってプルタブを開けた。 「まず、ウチらが所属している組織から話を始める。ウチらはお前も見たように、ああいった化け物を殲滅する役割を担う組織だ。 "Anti Paradox OPerat TOpsyturvydom SItuational Society"通称『APOPTOSIS』、日本語では『対矛盾戦略及び深淵観測協会』という」 「この俺のスーツの襟元についとるのが証明バッチや。かっこええやろ」 「主な活動内容は、先にも述べた化け物の殲滅と研究。それから深淵、まぁロアでもいいがそれの観測だ」 アポトーシス……知っている。自殺細胞の事だ。己を犠牲に他を生かす細胞。その名を配しているということは恐らくそういう組織なのだろう。 それと、カタワさんと対峙したときにも聞いた深淵、ロアという言葉。 「あの、深淵とかロアとかってなんですか?」 答えてくれるのであれば分からないことは何でも質問したほうが得だ。薫はそう判断する。 「深淵、ウチらは便宜的にそう呼称してるが基本はお前も知ってる。『誰もが知っている誰も知らない世界』のことだ」 「つまりは平行世界『パラレルワールド』や」 「パラレルワールド。そんなものが、本当にあるんですか?」 「ない。が、ある」 「はぁ?」 訳が分からない。この人は本当に答える気があるのだろうか疑問に思う。 「あるのは『エーテル』だけだ。それに膨大な意識が結びついて世界が出来る。だから現実には存在してない。人の意識の集合体の中に存在している」 「ソレが外側に現れるのが深淵や。まぁ、嬢ちゃんには難しい話やんなぁ」 「分かりやすく説明してやる。例えば水槽が二つあるとする。片方は水に満たされている水槽。もう片方は黒い布が掛かっていて中が見えない水槽だ。 水に満たされた水槽には魚が住んでいる。黒い方は分からない。魚は夢想する。きっと黒い布の水槽の方も水が満たされていて、魚が住んでいる。 だが現実には布の下は空の水槽だ。だが水に満たされた水槽の中の魚の中では、黒い布の下の世界が存在する。それが、平行世界だ」 ……例えそうだとしても結局中身が空なら実体がないではないか。 しかし薫を襲ったあの化け物も、あの暗闇の世界も本物だ。質感も、匂いも全て覚えている。 「納得いかんって顔しとるで」 「だって、それだと私の身に起こった事が説明付きません」 「それには次の話に移る必要がある。『エーテル』という世界を満たす情報伝達因子の説明だ」 「エーテル……」 これもまた実体のない話だ。過去、世界はエーテルで満たされてるとした学説が存在した。光、音、そういったものを伝播させる性質をもつ物質。 しかし結局その学説は科学の発展とともに淘汰されていった。高校時代に何かの科学本で読んだ覚えがある。 ならば、この人たちがいうエーテルとは一体なんなんだ。 「お前、幽霊と都市伝説の違いが分かるか?」 ナナシから薫へ唐突にそんな質問が投げかけられる。 幽霊と都市伝説の違い。都市伝説の中にも幽霊が関わっているのも存在するが基本は違うはずだ。 幽霊は、どことなく信憑性にかける気がするが、都市伝説にはどこか信じてしまう部分がある。 遠くと近く。そんな違いがあるように薫は考える。 上記の考えをナナシに提示する。 「三十点だな」 「なんも知らん子にキッツぅない?」 なんとなく悔しい。そもそも両者ともに噂程度の記憶の中にしか存在できないような曖昧な存在ではないか。 ソレに対して違いも何もあったもんじゃない。結局は両方とも怪異という括りで済ますことが出来ると考える。 「じゃあ、仮にその両者が存在しているとして、その生成条件はなんだと思う?」 また問題を出される。しかし先の点数による評価で回答する気をなくした薫は早々に白旗を振った。 それに対し小馬鹿にしたような笑みをナナシは浮かべ、話を続ける。 「霊とは単体の情報にエーテルが集合した物で、都市伝説は情報を有したエーテルが複数集まり形を形成したものだ」 そんなの分かる訳ないじゃないか。理不尽を感じながらも、黙っていたほうが早く話が進みそうなので黙っている。 しかしナナシの後ろで含み笑いをしている男を見て若干のイラつきを覚えた。 話は続いている。 「エーテルとは本来ならば現実に存在することの出来ない曖昧で弱い情報ですら収束する伝導体のことだ。氣・魔力・霊子とも呼称される。 人間には松果体という機関が脳にあり、それが普段エーテルを全て漉し取っているので本来知覚することが出来ない。 が、霊媒の家系・魔術師の家系と言った種類の人間たちの松果体は『開いて』おり、故にそれらを知覚ないし使役することが可能とする」 「アポトーシスはそういう『開けてる』人間が雇われて出来とるんや」 「そしてそのエーテルが全てにおいて重要な役割を果たしているんだ」 「じゃあ霊と都市伝説の違いから、我々の敵であるパラドックスの話をしよか。まず霊からや。 人間は死に際強い恨みや念、イコール膨大な情報を放つ場合がある。それにエーテルが急激に収束し形を成す。これが霊の正体や。 エーテルには強い情報には急激に集まる性質があるからなぁ。ソレが起因になっとる。 生前と同じ動きをする幽霊やとか、自縛霊等は、焼きついた情報があまりにも断定的且つ強すぎて、本来霊にはないはずの『設定』が作られてしまってんねや。 霊のいる場所で体が重くなるっちゅーのも、通常の密度を遙かに超えるエーテル量に常人の松果体が異常反応を起こすからや。 ちなみに呪いも全てはエーテルで証明されとる。過度な濃度で収束を続けるとやがてエーテル体は『腐る』。 その腐ったエーテルを取り込むと松果体が異常反応してメラトニンが過剰分泌され、結果死に至るっちゅーわけやな」 「だが、都市伝説は単一からなる霊とは違い複数からなる。エーテルには似た情報と結合する性質も存在する。 この似た情報が寄せ集まって出来るのが都市伝説だ。そこのハゲカスが言ってたように霊は死んだ人間の念が作り出す。 故に上書きが出来ない。霊はその霊以外に変わることがないんだ。だから対処も容易いし、そこらに転がってる似非霊媒師モドキでも消せる場合がある。 けど都市伝説、いやパラドックスは違う。何度でも上書き可能だ。何度でも何度でも人間が噂を付け足す限り際限なく成長を続ける。 それがパラドックスの恐ろしい所だ。まぁ、だから不安定でウチらの世界では具現化出来ないんだけどな」 「唯一の救いやね」 「つまり、エーテルの存在によって並行世界もパラドックスも生まれ得るという訳だ。 だが、松果体が閉じてる人間には知覚すら出来ない。故に、『ない、しかし、ある』とウチは言ったんだ」 ……。 理解が追いつかない。エーテルという魔法みたいなものが世界中に溢れてて、それのせいで化け物や幽霊が生まれる。 御伽噺を聞きにきた訳じゃない。私が、私が知りたいのは。 「理解し難いか。だがお前も襲われたろう。そろそろ諦めて認めろ」 「でも、それじゃあその『開いてる』人間以外がその存在を知覚できないなら、都市伝説――――パラドックスに襲われる人は皆開いてる人間なんですか?」 「それは違う。違うからこそ都市伝説という名前が付いている」 「そや、パラドックスは都市部でのみ、好き勝手に人間を深淵に引きずりこめる」 「だから、『都市伝説』」 「人口がある一定を超えると、それだけ情報の量は増える。奴らパラドックスにとっては活動しやすくなるって訳だ」 「そもそもそれ以外の場所では不安定すぎてすぐに拡散してしまうけどなぁ」 「ウチらはそういった都市に溢れるパラドックスによる被害を防ぐために先手を打って殲滅する。 都市部にて引き起こる平行世界、深淵を観測しパラドックスを見つけ、殺す。それがウチらの仕事」 「……どうしてパラドックスは人を襲うんですか?」 「そういう設定がされてるからや。いや、そういう設定がされてる奴が人を襲うタイプっちゅーか」 「ある化け物が人を襲う、殺すって噂がエーテルと結びついて形を得れば、当然その化け物は人を殺すだろ。 だってそういう情報で出来てんだからさァ」 「じゃあ、私たちは自分の首を自分で絞めてることになるじゃないですか! そんななんにも考えずに発信した噂に殺されるなんて!」 「人間どの時代だって自分の首を絞めて生きるもんやで、まぁそうさせないために俺らが組織されたんやけどな」 「他を生かすために己を犠牲にする。それがアポトーシスだ」 「おややぁ? ナナシちゃんそんな嘘ついてええのん? ホンマは殺したいだけとちゃいますのん?」 「あぁ!? 粉微塵にすんぞハゲカスが!」 「だって、『復讐』のためでもなかったら、あんな危険な都市伝説と契約するかいな」 「猿吉を悪く言うんじゃねぇ! 好きで連れてんだよ。……ってあれ? 猿吉は?」 「さっき出てったわ。ホンマ自由な腕やで」 薫を置いて喧嘩を始める二人。その間薫は今までの情報を整理することにした。 まず、世界にはエーテルという情報と結合する性質を持ったものが存在する。これに嘘は無いだろう。恐らく本当にある。 更にそれが、人間の噂と結びつき寄せ集まることで平行世界が生まれ、更にその中に都市伝説が生まれる。 これはどうだ。なにか重要な部分を隠されている気がする。とりあえず今はこれも信じるほか無い。 次に都市伝説についてだ。奴らは都市部でしか存在できない。理由は一定の人口数がないと情報の結合が弱くて拡散してしまうから。 これは……概ね真実だろう。仮にこの部分が嘘でもあまり問題はない。 最後に、所々に出てくる設定と契約という言葉。これに関してはあえてノータッチなのか、それともこれから説明してくれるのか。 ――――総合して、『話せる部分のみ話している』と判断する。 初めからそういう取り決めだったが、やはりそれらから核心の部分まで推測するのは不可能に近い。 自分の置かれている立場はやはり対等なものではないと足元も再確認させられる。 ふと気が付くと、先ほど姿を消した獣の腕がなにやら紙を持って入ってくるところだった。 「おお、猿吉どこ行ってたんだよ」 「キーコのところだ。どうせお前らには設定の話がうまく出来ないだろうと踏んで、キーコにわかりやすい資料を制作して貰った」 「猿、気が利くやん!」 「まあな。あと、次に猿っていったら殺す」 薫が紙を受け取ると、ベッドの側面に男とナナシが寄ってくる。結果三人で紙を見ることになった。 * 『 キーコのなぜなに都市伝説☆ 【設定】 ※このフリーペーパーは初めて都市伝説を知った初心者ちゃん向けに発行されています! 都市伝説は『噂』という不確定な情報の複合体がエーテルに焼きつくことで生まれる。 しかしながら非常に不安定な存在なので、不確定要素に対し一定水準の確率を常に安定させることの出来る ロア世界でしか存在できない。(強制的にロア世界に引っ張られる) 都市伝説の行動は全て人間の作り出した噂の影響力・浸透率の大小で決定されている。これが設定である ☆例 カタワさんは人間の血を失った部位に塗りつけると、その部位が生えてくるから人間を殺す。 という情報(噂)が存在するとして、 町規模(日数で言うと一週間前後)でその情報が定着している場合、殺すという事象の大きさも加味して 恐らく傷が治る程度しか機能しない=その設定は正常に機能していない 都市規模(日数で言うと一ヶ月前後)でその情報が定着している場合、殺すという事象の大きさも加味して 恐らく失われているパーツが復元する=設定が正常に機能する 式で表すと 設定=情報の定着量÷事象の大小 が一定の数値を超えると都市伝説に完全に書き込まれる。 事象の大小とは現実世界における影響力の強さであり、 ただ横をすり抜けるだけで危害を加えないという都市伝説の情報よりも、 殺す、呪われるといった影響の強いものほど設定の定着には多くの噂の広がりが必要になる この事象の大小には引きずり込みと呼ばれる、人間をロア世界へ迷い込ませる力にも影響する。 小さい事象ほど小さい範囲で引きずり込みが行われる。 ☆例 車を走らせていると、物凄い速さのババアが隣を走り抜けていった。 ↓ 車の内部ないし人間の体のみこちらに引きずり込めば十分可能。 カタワさんに殺される。 ↓ 町規模で仮想空間としてロア世界を構築しなければ不可能。 人間はその条件や設定が行われるのにもっとも適した範囲でロア世界に引きずり込まれることになる。 殺人などの大きな事象はそれだけ大きな範囲を生成しないと基本的に成り立たない場合が多い 故に複数人で都市伝説に遭遇したり、殺されるシーンや証拠となるシーンを誰も目撃していないというケースが多発する。 基本的な部分は以上! 分かったかな? 』 * こう書いてくれたこうが、会話で教えられるよりも分かりやすいなと薫はうなずく。 隣の二人もしきりに感心して紙を眺めている。 「まぁこの程度のこと知っとったけどな。復習や復習」 「その割には声が上ずってるぜェ足立よぉ」 「はぁ? 何言うてますのん。俺韓国語わかれへんねん」 「テメェ殺す!」 再度二人が喧嘩をし始めた。 と同時に天井付近に付属していたスピーカらしきものから危険を知らせるアラートと、緊急放送が流れ始めた。 【ガガッ――――司令部より緊急放送。研究棟地下実験室よりロアが流出。 AからFまでの隔壁閉鎖。非殲滅部隊は指定の緊急脱出経路より外部へ移行してください。 殲滅部隊壱は脱出経路の警備、殲滅部隊零は地下研究施設にてロアを完全排除してください。】 また、戦いが始まろうとしていた。 To Be Continued… 前ページ連載 - もぐたん
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4月某日 喫茶店 ルーモアにて 「…そうか。「日焼けマシンで人間ステーキ」の青年のアルバイト先にも、悪魔の囁き感染者はいなかったか」 「はい、今のところではありますが」 黒服とTさんは、悪魔の囁き騒動に関する事で、情報交換を行っていた 電話でも話せる事ではあるが、直接顔を合わせて情報交換を行うのが一番だ 「朝比奈 秀雄の三つ目の都市伝説に関しましては、まだ、正体が確定できません。いくつか、心当たりはあるのですが…」 「…怪力に高い防御力、炎と毒のブレスか……心当たりはあるが、それでだけはあってほしくない、と考えたいところだな」 Tさんの言葉に、全くです、と小さく苦笑する黒服 …「組織」内部でも、これでは、と予測は立てられ始めている…の、だが まだ、核心できるほどの情報は少ないのだ もっとも、朝比奈 秀雄の最後の都市伝説がそれであると「認めたくない」だけなのかもしれないが 何せ、それは……あまりにも、強力すぎる都市伝説だ 単体契約でも、それと契約した瞬間に飲み込まれる可能性が高い それを含めた多重契約をしているのなら……朝比奈自身の「器」は、はたしてどれだけ強大なのか それを考えるのが、恐ろしいのかもしれない 「それと…朝比奈 秀雄に、都市伝説の契約書を横流ししていました「組織」の裏切り者が、判明しました」 「…「コーラにはコカインが含まれている」の支配型の契約者が増大した原因を作った者か」 「はい…H-No.9。「病は気から」に飲み込まれた存在です。私は担当部署が違いますので詳しくは知りませんが、元々は研究班に所属していたようですね」 …「13階段」の契約者たる広瀬 辰也にとっては、因縁のある相手である事を、この黒服も把握している 彼が、今回のその事実を知ったならば…H-No.9が「組織」から離脱し、討伐対象になっている事を知ったならば…復讐の為に、先走った行動をしなければ良いのだが この黒服は、それを心配する 「それと……その、朝比奈 秀雄の目的なのですが。翼の実家の権力以外にも、狙っているものがある可能性が、出てきました」 「……それはもしや、「小瓶の魔人」か?」 Tさんの口から、「小瓶の魔人」と言う単語が出て 黒服は、思わず眉をひそめた …まさか、だが 「あぁ、朝比奈 マドカから聞いたんだ」 「…やはりですか」 彼女の軽率さに、かすかに頭痛のようなものを覚える 相手が、Tさんだから良かったものを あのような存在については、あまり口外すべきではない 「黒服さんも、それについて知っていたか」 「…日景家を訪問した際に、その小瓶を拝見しました。小瓶の中から、威圧感を感じる程の強い都市伝説の気配を感じました…あまり、長くそばにいると、その威圧感に押しつぶされるのではないかと言う錯覚を覚えましたよ」 「なるほど、本物か」 はい、と頷く黒服 …朝比奈 秀雄が、その存在を把握している可能性がある 朝比奈 マドカが、その存在を口走ってしまっている可能性が高いからだ こう言っては悪いが、彼女は後先を考えない部分がかなり、あるようだから そうじゃなくとも、酒の勢いで口走ってしまった可能性も、高い 「…Tさん、申し訳ありませんが。その事は、できればご内密に」 「あぁ、わかっている。願いをかなえる都市伝説を保有している、と言うのは………不幸を招く情報だからな」 自身も、そう言った経験をしているからだろうか 神妙な表情のTさん 「「日焼けマシンで人間ステーキ」の青年は、その情報は」 「把握しています。あの子も、朝比奈 秀雄はその小瓶も目的としている可能性が高いのでは、と言っていました」 だからこそ、翼は余計に、朝比奈 秀雄を倒さなければ、と考えている …たとえ、その命を奪う事になろうとも だが、優しい翼の心が、肉親殺しと言う業に耐えられるとは思えない ……だから いざと言う時は、自分が、翼の代わりに手を下そう 黒服は、そう決意する 「……黒服さん。背負い込みすぎないようにな」 「はい。お心遣い、ありがとうございます」 黒服の表情から、何かを感じ取ったのだろうか Tさんの言葉に、黒服は小さく苦笑して答えた さて、あと、Tさんに伝えていない情報は何であったか 黒服が、情報を整理していると …からん…ころん… 「あ、いたいた。Tさーん、黒服さーん」 「おにいちゃーん」 店内に、Tさんの契約者の舞と、リカちゃんが入ってきた そして、舞の後を付いて来るように、ゴスロリ服の少女が入り込んでくる その少女の姿に覚えがある黒服は、おや、と小さく声をあげた 「ヘンリエッタさん?」 「おぉ、D-No.962か」 「…あれ?黒服さん、知り合い?」 首を傾げた舞に、はい、と答える黒服 てとてと、舞達は黒服とTさんの席へと近づいてくる 「私の上司が担当しております、契約者さんです」 「うむ。そして、望の友達なのじゃ!」 どこか誇らしげに、ない胸をはってそう言ったヘンリエッタ ヘンリエッタの声に、Tさんが聞き覚えがあるような表情を浮かべたのだが、黒服は気づいていない 「なぁ、Tさん。あのユニコーンの兄ちゃん、やっぱり、悪魔の囁きにとり憑かれてたみたいだぞ」 「…!また、遭遇したのか?」 頷く、舞とリカちゃん 黒服も、眉を潜める 「…また、悪魔の囁きにとり憑かれている者が、現れたのですか?」 「うむ、妾が調べたのだから、間違いないのじゃ!」 再び、胸を張って言うヘンリエッタ 黒服は、難しい表情を浮かべる 「…近頃、「リア充爆発しろ」の能力によるものと思われる爆発事故が多発していまして。「組織」としては、その契約者が悪魔の囁きに騒動に関連している可能性を調べていましたが……ユニコーン、ですか」 ユニコーンは、貴重な都市伝説だ 確か、ヨーロッパでも数えるほどしかユニコーンと契約した存在はいない 後で、「薔薇十字団」に問い合わせれば、何かわかるかもしれない 新たな情報を手にして、黒服は思考をめぐらせるのだった to be … ? Tさん「コーク・ロア:お嬢さん」へ 前ページ次ページ連載 - とある組織の構成員の憂鬱
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#blognavi lv42で未だにトンコーも特化も無いおんみょーですコンニチハ。orz わいら狩りから帰ってきて実験。 それは「番号付きの断片を持ってスクラッチを削ると、 足りないのが出やすい」というもの。 都市伝説っていうかおまじないの類デスケド 足りないのが三椏4(叢雲)だから取りに行けない。 →こういうのにも頼りたくなるんです・・・(´・ω・`) というわけで三椏1~5までを持ってスクラッチを削ってみました。 1枚目・・・三椏4。 2枚目・・・三椏4。 ∑( ̄□ ̄;)!? ・・・ホントかもしれない。 普段番号ありを持たずに削ると、2と3が出やすいんですよ。 2枚中の2枚なので偶然の範囲ですがw 試してみる価値はあるのかもです。 カテゴリ [真人] - trackback- 2005年06月07日 21 16 40 ミツマタ5が、25枚位になった罠‥。 -- カムイちゃんです。 (2005-06-08 15 17 57) スクラッチの偏り方って絶対作為的だと思ってますw -- 真綾 (2005-06-10 00 41 47) 名前 コメント #blognavi
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「世話になったねぇ」 マドカが舞とTさんの住いに泊まった翌朝、そう言ってマドカは笑った 玄関先に立ち、早速タバコを取り出そうとしている …どうやら、家の中ではタバコを遠慮してくれていたらしい 「姐ちゃん、これからどうするんだ?」 「どうするのー?」 舞とリカちゃんの問いかけに、マドカはそうさねぇ、と笑う 「翼の事も心配だけど……その前に、バカ亭主がやらかしている事を止める方が、先みたいだからねぇ?」 「相手の能力に不明な点が多い。無理はしない方がいい」 「なぁに、あたしだって都市伝説契約者さ。そう簡単にやられたりしないよ」 Tさんの言葉に、カラカラとそう答えてきたマドカ ようやくタバコを取り出し、火をつけようとしている 「…そう言えば、姉ちゃんの契約都市伝説って、何なんだ?」 「ん?……あぁ、そう言えば、話していなかったねぇ?」 舞の言葉に、タバコに火をつけようとしていた手を止めて ニヤリ笑って、マドカは続ける 「そうさね…泊めてもらった恩だ。見せてあげるよ、あたしの契約都市伝説の力」 マドカがそう言った、次の瞬間 辺りが、強い光に包み込まれた 「へ?」 きょとん、としている舞 光が消えた、その時……マドカの手に、持っていたはずのタバコが、消えていた 「あれー??」 リカちゃんも、首をかしげる 光で視界が遮られたのは、ほんの一瞬 マドカが、身に纏っている服のどこかにタバコを隠す事は不可能 足元に落とした、という訳でもない……彼女の足元に、タバコは落ちていない 火がついていなかったあのタバコは、どこに消えた? 「……なるほど」 「え?Tさん、わかったのか?」 「恐らく、だが」 …………………………ではないか?と 尋ねたTさんに、マドカは笑った 「---ビンゴ。よくわかったねぇ?」 「まぁ、タバコがどこに消えたのか、から予測したまでだが」 からから笑いながら、マドカは新たなタバコをとりだした 火をつけ、咥える 「生物、無生物問わず、ほぼ問答無用で発動できるよ。まぁ、それしかできないんだがね」 「充分、強力だろう」 問答無用で発動すると言う事は、問答無用で相手を無力化できる能力なのだ、マドカの契約都市伝説は むしろ……そのまま、相手を殺す事も可能な力 なるほど確かに、自分の身を護る事は可能だ 油断さえ、しなければ 「何かわかったら、伝えてくれるかい?」 「了解した。そちらも、何かわかったらすぐに伝えてもらえるとありがたい」 「あぁ、任せとくれ」 それじゃあ、と 舞達に別れを告げて、立ち去るマドカ …彼女が立っていた場所から、ほとんど離れていない位置の壁から まるで、そこを作る際に埋め込まれていたかのように……タバコのフィルターが、ほんの少し、はみ出ていた事に その時、舞ははじめて気づいたのだった to be … ? Tさん「コーク・ロア:思案の朝」へ 前ページ次ページ連載 - 悪意が嘲う
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一人の少女が寂れた路地を走っていた。 『君が悪い都市伝説や契約者を殺していけば、その分君の両親が都市伝説絡みの事件や事故に巻き込まれる確率は減る。そんなにも両親を大事に思っているなら…出来るだろう?ただ、僕達の言う事を聞いていればいい。 大丈夫、回数を重ねて行けば殺しのコツも掴めてくるよ』 窓が無く、マットレスがむき出しになったベットが一つ。 数日前、牢獄のような簡素な部屋の分厚い扉越しに、知らない声にそう告げられた。 人を、都市伝説を殺すのは、怖い。 けれど、自分が躊躇ったせいで両親が死ぬのはもっと怖い。 役に立たないからと捨てられるのは、居場所を失うのはもっともっと怖かった。 前方に、標的が見えた。 瞬間、左腕が変質した。 衣服の腕の部分が内側から食い破られるように裂かれ、皮膚や、内側の筋や骨が丸ごと金属に変わったかのように、肩から先が自動小銃に変わっていた。 少女――蛍が新しく契約した都市伝説の内の一つ、『摘発を免れた某教団の自動小銃が残っている』 角を曲がろうとした標的を、鉛玉が打ち抜いた。 ――― 小学生くらいの少年が、寂れた路地を歩いていた。 この道はあまり好きではなかったけれど、家から学校までの近道だった。 後三つ角を曲がれば、路地を抜けられるという時、銃声が聞こえた。 「………っ!」 突然の銃声に、びくりと身体をすくませる。 どうやら、一つ先の角から聞こえてきたらしい。 何かあったのだろうか――好奇心が勝り、そろそろと足を進めて行く。 奇妙な生き物が、全身を穴だらけにして倒れていた。それを、誰かが屈んで見下ろしている。 しばらくして、奇妙な生き物は光の粒になって消えて行った。 今見たものが信じられなかった。 感想を挙げるなら、『何、今の??』と言ったところだ。 視線を感じた。 奇妙な生き物を屈みこんで見下ろしていた者が、こちらを見つめていた。 例えるなら、人間のなりそこない。 本来、左腕がある所が銃器に変わっていた。 左目は、ぎょろぎょろと絶え間なく不気味に視線を彷徨わせている。 ――次は、僕の番? ――あのお化けみたいに穴だらけにされて死ぬの? 「う……ぁ……! うわあああああああああああ!!化け物っ!来るな!来るなぁ!!」 足元に、石ころが転がっているのが見えた。 とっさに投げた石が当たり、そいつがひるんだ隙に逃げだした。 ――― 少年の姿が見えなくなった。 こめかみの辺りが熱かった。 左腕は徐々に皮膚に覆われて行き、数分で人の腕の形を成していた。 「―――化け物、なんて」 蛍の口が、小さく動いた。 「……そんなの、自分が一番よく分かってる……」 指の関節が白くなるほど、両の拳を握りしめた。 迎えに来た研究員に連れられて車に乗り込む。 こめかみを伝う血を気にする者は居ない。 あるのは、異形の被験体への蔑み、畏怖、研究に関わる者としての興味・関心 ただそれだけ。 続く…?
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…街中で、たまたま、その姿を見かけて あちらも、こちらに気付いた様子に…魔女の一撃契約者、清川 誠は小さく舌打ちした 隣を歩いていた直希が、小さく首をかしげる 「どうした?誠。あちらの銀髪男性は、君の知り合いか?」 「……知り合い、ってレベルでもないんだがな」 できば、顔を合わせたくない相手である事は、事実だ 秋の終わり、中央高校を陣取ってのあの騒ぎの時、ほんの少し、顔を合わせただけの相手だ とっくに忘れ去られていると思っていたのだが…どうやら、覚えられていたらしい マッドガッサーじゃあるまいし、そこまで特徴的な顔をしているつもりもなかったのだが 「久しぶりだな…魔女の一撃の、契約者」 「………よく、覚えていたもんだな」 無意識に、視線をそらす …あの時は、悪魔の囁きに耳を貸してしまっていた状態だった それを、言い訳にするつもりはない だが、目の前であんな事をやらかしたのである やや、気まずい その銀髪の青年は、じっと、誠を見つめ……何か、納得したように頷いている 「「悪魔の囁き」は、もう離れたか」 「……気づいていたのか」 再び、舌打ちする 自分でも気づいていなかった、内に住み着いた「悪魔の囁き」の存在 この銀髪の男は、あんな短い間しか顔を合わせていなかったと言うのに、それに気づいていたのか マッドガッサーが言っていた通り、対象の状態その他を把握する能力を持っているようだ …そんな能力を持っている相手が、誠は正直苦手だ 普段、表に出さないようにしている、自分のどす黒い…醜い部分まで、全て見透かされてしまうような錯覚 大して親しくもない相手に、それを悟られるのがどうにも落ち着かない 「…?ふむ。一連の会話から察するに、あなたも都市伝説契約者、もしくは都市伝説本体、と判断しても、よろしいのかな?」 誠と銀髪の青年の言葉に黙って耳を傾けていた直希が、小さく首を傾げた その拍子に、青いリボンで結ばれた長い髪が揺れる 直希の言葉に、銀髪の青年は直希に視線をやって 「………」 …一瞬、黙り込む 「……特殊な趣味を持っているようで」 「何を誤解したのか知らないが、直希はただの友人だぞ」 確かに 今、直希は身内の陰謀により、どう見ても女にしか見えません、ありがとうございました、と言う服装になってはいるが たまたま、街で顔を合わせたらちょうどそんな格好だっただけであり、間違っても直希とデートをしていた訳ではない 特殊な趣味なんぞない ただ、翼の事が好きなだけだ 銀髪の青年が言った特殊な趣味、というのがわからなかったのか 直希は、再び首を傾げた 「誠、それは、どんな趣味なのだろうか?」 「あぁ、お前は気にするな」 ぼふ、と軽く頭を撫でてやる 知識欲は人一倍旺盛で、実際、それなりに頭がいいと言うのに、直希はどこか決定的なところで抜けている 首をかしげながらも…直希は、銀髪の青年に向き直ると、小さく頭を下げた 「お初にお目にかかる。あなたも都市伝説契約者、もしくは都市伝説ならば、報せる必要があるだろう…僕は、「仲介者」。都市伝説組織を知らぬ者が都市伝説事件に巻き込まれた際、それを助ける仕事をさせていただいている」 「仲介者……そう言えば、聞いた事があるな。フリーの都市伝説契約者に仕事を斡旋している何者かがいると」 銀髪の青年の視線が、直希に向けられた 直希の情報が、ゆっくりと読み取られていく (……「光輝の書」の契約者……相性が悪いのに、よく扱えているな。都市伝説自身との対話が成立したからこそか…?) ゆっくり、ゆっくりと読み取られていく情報 …その中で、ある、一つの情報に辿り着こうとした、その瞬間 ------ギロリ 直希が手にしていた、「光輝の書」の中の、直希の呼びかけに答える天使たちが………一斉に、銀髪の青年を見やった 「!?」 まるで それを見るな、と言わんばかりに それを知るな、と言わんばかりに 天使達が、情報を読み取るのを邪魔しようとしてきている 「……ふむ?」 手にしていた「光輝の書」に、直希は視線を落として ふむ、と頷くと…ぱたん、と「光輝の書」を閉じた そして、つ…と、その細い人差し指を口元に持ってきて、告げる 「…その先は、僕のトップシークレットだ。まだ、伝えていない友人もいるのでね?」 秘密だ、と かすかに、その淡白な表情に笑みを浮かべる 「どうしたんだ?………まさか」 「あぁ、誠、身構えるな。読まれてはいないはずだ」 多分な、と 銀髪の青年に、警戒体勢を見せた誠に、直希はそう告げる …天使達の視線は、もう、銀髪の青年を向いてはいない 「…申し訳ない。「仲介者」に関しては、その情報が酷く曖昧だったからな。少し、確認をしたかったんだ」 「問題ない。諸事情あって、僕はあまり表に出させてもらえていないのでね。できれば、僕自身がもっと事件解決に動きたいのだが」 「お前は体が弱いんだから。あまり表に出るべきじゃないだろうが。あちこち心配させるぞ」 わしゅ、と 誠が、また直希の頭を撫でた 同じ歳のはずなのだが、どうにも、誠は直希を若干、子供扱いしてしまう傾向があった 直希自身が抗議もしてきていないので、高校の頃から、それはずっとそのままだ 「そこまで、弱いつもりもないのだが…」 「一月の終わりに大風邪ひいて死にかけたのは誰だ。また翼に心配させて」 「………むぅ」 翼の名前を出されて、直希は押し黙る …ちらり 誠は、銀髪の青年に視線をやった 正直、これ以上関わりあいたくない もう、自分の中に「悪魔の囁き」はいないとは言え…どうにも、居心地が悪いのだ 「直希、行くぞ」 「うん?……あぁ、そうだな。それでは、失礼」 銀髪の青年に、優雅に一礼して見せて 直希は、誠の後をついて、この場を後にした 人通りの多い道、羽毛をあしらったマフラーをした女性にぶつかりかけながらも、その姿はすぐに見えなくなった 銀髪の青年は、その二人の後ろ姿に視線をやって 「………?」 …気のせい、だろうか 誠の中に……かつて、己の契約者の中に、見つけたような 黒い、黒い…………「悪魔の囁き」の、卵が 一瞬、見えたような、気がしたのは 「…」 「…誠、どうかしたのか?」 「……いや」 …気のせい、か? さっき、ぶつかりかけた女…どこか、で、見た事があるような? (…確か、あれは…) ……あれは……確か…… 高校の…卒業式の、時 一瞬、見かけた、翼の父親の隣に居た、女だったような? (でも…あれは、翼の母親じゃねぇ) あれは、誰だったのだろうか? それに、あの時見かけたのは…本当に、翼の父親だったのだろうか? どうにも、思い出せない (……まぁ、いい) もし、翼の父親が、翼に接触しようとしたならば、邪魔してやるだけだ …あんな男を、翼に近寄らせて溜まるか もし、無理矢理にでも近づくようだったら…… 自分の中で、黒い感情がかすかに動いた事に 誠は、この時はまだ気づいていなかった to be … ? 前ページ次ページ連載 - マッドガッサーと愉快な仲間たち
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「天照と「月読の…「「「東京」バックグラウンドパート4」」…」ー!」 「さあ、早いもので4回目となりましたこのバックグラウンド、いつものようにこの「特設スタジオ」から堂々電波ジャックの生放送でお送りしてまーすっ!」 「テンションタカクテツイテイケナイ…」 「それにしても、あの豪快すぎる魅せ技は流石に無いよねぇ?」 「絶対にありえない…」 「だってあんなん使われたらそりゃどんな都市伝説だってイチコロに決まってるでしょ?そしたら私らの出番無くなっちゃうじゃない?」 「…イキツクサキハヤッパリソコカ」 「 何 か 言 っ た ? 」 「パワーバランスが大事って…」 「それならいいけどね♪」 「タスカッタ…」 「それでは、お便りのほういってみましょうっ!」 「P.N.「メリーちゃんとラブラブ(はぁと)」さんからのお便りですっ!」 「外部の人からお便り届くのは初めてですね…ミナサマガタナラゴゾンジナノデショウケド」 「ん?どしたの?」 「なんでもない…ただの独り言…」 「「みなさんこんちはっ!」 「ウザッタイテンションガマタヒトリ…」 「ワイはかわいいお人形さんとイチャコラしながら都市伝説と戦うかっこええ契約者なんですが」 「リアジュウシネ…ッテイウカニンギョウトイチャコラッテハタカラミタライタイコニシカミエマセンヨ?」 「あんたらはどの辺を活動拠点にしているのか教えてほしいなぁーと思って手紙出しました!」だそうですっ!」 「そもそも貴方は索敵に優れてるって自分で言ってませんでしたか?だったら自分d」 「そういえば私も気になってはいたのよねー」 「勝手に割り込まないでください…」 「という訳で、この件に関しても作者からお手紙を預かってきておりますっ!」 「その準備の良さを他に生かせませんか?」 「えーと、何々「活動拠点といたしましては、主人公たちが今まで戦った場所が全部繁華街かその周辺なので、」 「いつも通りの作者の投げやりですね…」 「今まで見てきた学校町の設定を元にすると、やはり南地区に活動拠点があると推測せざるを得ないと思われます。」 「ナゲヤリニモホドガアル…」 「なので、南地区周辺だと思われます。」だそうですっ!」 「なぜ作者は私達の活動拠点を明かす必要があったんでsy」 「へぇー!私たちは南地区周辺に存在してたんですか!」 「だから割り込まないでください…」 「これから話の展開が広がってきそうですねっ!」 「という訳で、今回もいつも通りの展開でお送りいたしましたこのバックグラウンド」 「あぁー!私抜きで勝手に締めるなぁ!この番組では、お便りをどんどん募集しておりますっ♪」 「宛先は郵便番号×××‐×××× ××県「バックグラウンド」まで…」 「あなたのお便り、「「待ってまーす」」…」!」 「ワタシニナニカモンクデモアルノ?」 「ダカラソンナコトヒトコトモッテダカラアマテラスサンオネガイダカラグーダケハヤメテグーダケハァー!」 前ページ次ページ連載 - 結界都市『東京』